クリード チャンプを継ぐ男(ネタバレが致命的な映画ではないし配慮しない)

始めに書いておくと、酷評に近いのだけど、タマフルでの宇多丸師匠は2015年に間に合っていたらベスト3には入ったと絶賛だし。リスナーでも賛が8割だったとのことなので、気にせず観に行くのがいいと思います。

話の筋はいいです。っていうかそれしかしようがないし、求められてる物でもあると思う。しかしその道は、お客さんに驚きを提供できない、想定を超えないのだから、ならば変な隙があってはいけないと考えるのに、これはその点相当な不満がある。全てにおいて、ああ、まあ、そうなんでしょうね、という反応に。

ああ、まあ、そうなんでしょうね集

何故ロッキーがコーチを引き受けるのか

まあ、そりゃ引き受けるよね。さもないと話にならないし、誰もがそういうものだとわかって観に来てるわけだから。でも、なんでもう業界離れて長く、取り合ってもくれなかった彼が、引き受けるよう心変わりしたのか、納得できる描写がない。

直前のシークエンスはエイドリアンのお墓の前で新聞を読んでいたというもの。そこまでは、めんどくさそうに追っ払って、根負けして練習メニューのメモを渡してたぐらい。何か転機になることあった?

そもそもなんでアドニスはボクサーを志すのか

今回の主人公はこの手の映画には珍しく(というか記憶にない)、インテリ。(ぱっと見)よさげな会社に勤めて、大きな家でいい車に乗っている。それをいきなり辞める。

もちろんそこはクリードの血がさせることなんでしょう。youtubeでアポロの試合観ながら自分もやりたくなってる、ってところなんでしょう。でも、これも、ああ、まあ、そうなんでしょうね、って感じ。いい年こいていい生活捨てて無名のボクサーになるって、普通の人にはまったく理解できない大事だよ。かなり強めのモチベーションを見せてくれないと納得できない。仕事を辞めるところから始める意味がわからない。

あと、これ、夢をつかめ!みたいな台詞との親和性がものすごく悪い。チンピラの成り上がりだから活きるアレでさ。いい暮らしだったらお前が勝手に捨てたんじゃんってことだから。ついでに書くと、あんなスーパースターになったロッキーがいい年なのに従業員も使わず、小さなレストランで自分で荷物運んだりしてるのもアレ。夢の話はもちこめないよね、これ。

ついでにもうひとつ、インテリっていう設定が足を引っ張るのは、いうてもアドニスは結局他のボクサー映画と同じくチンピラなんだよ。全然インテリじゃないんだよ。バカがやりそうなことをそのまんまやるんだよ。じゃあその設定いらないじゃん。全然活かせてないじゃん。いい生活をしてるのに血に勝てなかったっていうこと言いたいだけで、そのための補強を全然してないじゃん。

なんでアドニスとビアンカが恋に落ちるのか

よくある出会いは最悪メソド。夜中だってのに音楽がうるさいご近所さんで、注意したのにすぐにでかい音出したというもの。で、なんで食事誘うかね?かわいいから?や、まあ、かわいいけどさ。

そこで進行性の難聴の話が出る。この順番が逆ならわかるんだ。耳がよくないから音が大きいのに、知らなかったとはいえいきなりすごんで悪かったなとお詫びの食事。で、そこをきっかけに恋にってならいいさ。それしないならビアンカの進行性の難聴の話にストーリー上の機能としての意味があまりない。

まあ、そりゃ恋には落ちるんだろうけど、やっぱり、ああ、まあ、そうなんでしょうね、だよ。

アポロの息子であることを隠していたのを何故ビアンカが怒るのか

フィラデルフィアでアポロって英雄じゃないよね?英雄はロッキーの方だよね。それも30年だか昔の。それ、特別ボクシングに興味のない女子にとって重要なこと?今、東京で「なんで新垣諭(東京以外の世界チャンピオンで在位期間から適当に選んだ)の息子だって隠してたの!?」って怒る女子いる?

や、まあ、そりゃ秘密があったって怒るのはそりゃそうなのかもしれない。でも、アポロがこの街でどのぐらいの影響があるのか知らしめるエピソードあった?なきゃそれが言わないと怒るレベルの秘密なのかがわかんないよね。

なんでお母さんは理解してくれるようになったのか

リングに上がるならもう連絡するなっていって、アドニスからの電話(留守電)もガン無視してたのに、なんで許すの?

まあ、そりゃ許すさ。特にあの星条旗のトランクスを渡すのは重要だからね。でも、なんで?なにをきっかけに?なんのシークエンスもなかったよね?

このチャンピオンは強いのか

まず、ルックスが悪い。この人は雑魚役ですって言われても納得するぐらい、あまりハッタリが効いておらず、身体が全然できてない。

とはいえ、この身体でも、努力しないでも強い天然なんですっていう作り方はできる。ただ、やはりそれを知らしめるシークエンスがない。唯一その機会であった試合を、記者会見で暴れて試合を潰すバカってことに使ってしまう。あれ、ホントいらなかった。名前忘れちゃったけど、一応訓練前とはいえアドニスを瞬殺してるボクサーなんだからそれをあっさり倒せば一応の筋は立ったでしょうに。

ということで、これも、ああ、まあ、チャンピオンっていうぐらいだから強いんでしょうねっていう印象。4のドラゴなんかと比べても大違い。あれはアポロを完膚なきまでに叩きのめしたわけだから完全にラスボス。

あと、多分、このマネージャーが無名のアドニスを指名するってのは、ロッキー1のオマージュなんだと思うんですよね(それを使わないと無名のアドニスが挑戦権を得るという無理筋を突破できないし、終わり方も含めて)。でも、それならやっぱりあそこは素直にちゃんと試合して、こんな身体だけど強いんだっていうシークエンスを設けた方がよかったのではないですかね。本当にただ対戦相手がいなくて困って、もう一応話題性はあるしこいつでいいやってアドニスを選んだという、やむを得ずに見えてしまって、オマージュ感がなくなった。

なんでチャンピオンは試合後友好的になるのか

いい試合だったから認めるみたいなやつじゃなかったでしょ?そういう描き方してないでしょ?

まあ、そりゃたたえ合うさ(略)

その他

あの曲の使い方が中途半端。あそこからああ続くんじゃガツンと使っても活きないのもわかるけど、え?それだけ?そこで終わるの?ってがっかりした。やるなら照れずにやらんかい。

最後に、これはシリーズ伝統というか、こういう映画の悪癖だけど、パンチが当たりすぎる。そんなん入ったらカウント取らずに試合止めるわっていうレベルのがガンガン入ってる、けど倒れもしない。格ゲーじゃないんだから。古い映画は古い映画で、せっかく2015年にやるならもうちょっとそういうところ真摯に取り組んで欲しい。今どき少しぐらいリアリティーにも気を遣っておくれな。

宇多丸師匠が言うように、話題になりそうなタイトル使って適当にお金儲けという批判は当てはまらないと思っていて、真摯に作っているとは思うのだけど、能力が至らなかったという感想にはなってしまう。こういうのこそ手堅いベテランにやらせたい。

ついでにいうと、その撮ったことのない無名監督の熱意にスタローンがほだされてっていうのが本作そのまんまじゃないか!みたいなの。終わってから知ればなるほどいい話かもしれないけど、映画そのものの評価としてはどうでもよくないですかそれ。

ストレイト・アウタ・コンプトン(ネタバレっていうか、知らない人これ観るの?)

ヒップホップ(正確にはラップ)を好きなものとして、義務感のようなもので観に行ったけど、観ておくべきものを観られたようで、よかった。

N.W.A.の自伝映画で、今の日本で彼らのことを知っている人はヒップホップを聴く人、つまり顛末を大体知っているだろうから、あまり普通の映画として楽しむものじゃないと思うんだけど、どうなのかしらね。これがローグネイションを抜いて1位っていうのはアメリカっていう国のおもしろいところだけど、どんな世界なのか正直想像もつかない。だってN.W.A.だよ?

上述の通り、デビュー後の顛末は知られてることなので、お話として面白いのは結成してからデビューするあたりまで。これはなかなか興味深い。E以外は全然ギャングじゃなくて、誰かの家に集まってああでもないこうでもないって言い合ってる、いわばボンクラなのよね。以外にそんなところに親近感があったりして。

まあ、話はそんなところで、おもしろいのはキャスティング。とにかく似ている。E、キューブが目立つところだけど、シュグとか2PAC、スヌープあたりはほぼ出落ちというぐらい似せることに力を注いでいて笑える。

シュグといえば、実話ベースだから、基本気を使っている感じなのに、何故か彼だけ異常に扱いが悪い。あいつだけはガチで悪者だからいいだろということなのかしら。この映画観たらキレて殴りかかってきそうな気すらする。ドレとの関係がどうなってるのかよく知らないけど、よくなってはいないんだろうなー。

ドキュメント映画と考えたら一点不満なのが、契約というか、ギャラ関係がどう不平等なのかよくわからなかったこと。数字が全然出ていない。知らなかったけど、詞はEじゃなくてキューブが殆ど書いてたんでしょ?で、ドレが音を作ってたんだから、それが冷遇されるって、ナカコーといしわたりの分までミキたんが取ってたみたいなもんで(だいぶ違う)、そんなんうまくいくわけないし、バカじゃないのって感じ。バカすぎて意味がわからない。

ということで、この周辺知識がない人にオススメできるものじゃないんだけど、逆に、だからこそそういう人たちがどういう感想になるのかすごく知りたいです。

ああ、あと、エンドロールでチャックD役ってあったけど、そんなん出てた?見逃した。

THA BLUE HERB 「IN THE NAME OF HIPHOP」RELEASE TOUR @恵比寿リキッドルーム 12/30

年末で忙しいし、当然月末になるので小遣いも厳しいから諦めようと思ってたんだけど、辛抱たまらずギリギリで買った。本当にギリギリだったようで、当日券も含めて完売とのこと。さすがTBH。宇多さん曰く日本で唯一ツアーだけで食っていけるヒップホップグループ(だったかな?違ったらごめんなさい)

TBHとはあるけど、このツアー名の通り、やはり基本的にはボスのソロ曲が中心で、”BROTHER”とか”雨ニモマケズ”みたいな有名曲を足す感じ。プラスゲストで、ちょっとお祭り感。

基本的にはそうだと思っていたし、ボスというかっこいい人を観に行ったわけなので満足なのだけど、TBHの曲の扱いについてはちょっと不満がないではない。これまでもそういうところはあったけど、トラックを変え(すぎ)ちゃうと、しばらく何の曲だかわからなくなる。”雨ニモマケズ”もポーティスの曲だったけど、すぐ雨ニモマケズっていうからまだいいけど”BROTHER”とかはそうと認識するのに少し時間がかかるから、始まったときの高揚感がなくていまいち。”¥”をウータンの”C.R.E.A.M.”にしたのはダラダラビルヨーが歌詞にぴったりなので、そういう遊び心はいいと思うのだけどね。

前述のゲストはユーちゃん、JOE、般若の3人で、それぞれ持ち歌(共演曲)を。しかし、何年ぶりかもわからないほど久しぶりに見たユーちゃんが酷かった。全然オーラのないしょぼくれたおっさんってテイで、噛むわ飛ばすわ結果少しやり直すわでぐっだぐだのデキ。仲直り(?)の感動的な曲なはずなのに、「やり直させてくれ!」は台無しだよ。

その曲もそうだし、MCの中でライムスター、スチャダラパーにピースって言ってくれて、かつての尖ってたボスじゃなくなっているのかもしれないけど、多分そういうことを含めた変化を肯定するって発言もあったので、時代は変わる!のだな。

最後ボスがダイブでおれのいた一番後ろまで来てくれて、ちょっと触れ合って終わり。良いライブ締めだった。未来は俺等の手の中

COUNT DOWN JAPAN 12/8

年末バタバタしててやっと。

AIMER

歌い方でBjorkかよと思ったら本当にHyper Balladだったので笑った。本当に歌が上手い。歌姫というのはこのレベルだよなー。何故かずっと逆光で、せっかくビジョンもあるのに顔がわからないのは戦略なんだろうけどあんますきじゃないなー。

その煽りで、ギター藤岡幹大かなーと思って、実際後のツイートで確認できたものもそのときはわからなかった。

indigo la End

なんだかめんどくさがって全く聴いたことがなかったのだけど、これはすごい好き。曲だけ言えばゲスより好きかしれん。絵音はいまの子のマサムネなのかもしれない。

ここが唯一のギャラクシーだったんだけど、向きを変えることでど真ん中にとんでもない柱登場。これはないわー。

赤い公園

なんだか津野がキレッキレだったように思う。彼女のギターは少年少女が始めたくなるような根源的なカッコよさに満ちている。

鍵盤は佐藤がやっていたけど、津野はギターに専念できるのかなあ。だとすると嬉しい。

藍井エイル

シリウスでぶち上がり。アニソンはいい。

ただ、この子のファンってこんな感じなのな。サイリウムV系に振るのはまあそんなもんかでいいんだけど、ヲタ芸打つやつが横にいてえらい不愉快だった。

どうでもいいけどホットパンツなのに煽りで映すのやめてくれないかな。見ちゃいけないような気がして。

BABYMETAL

いつもどおりだけど、せいやー!って空手やる新曲が素晴らしかった。ホントライトスタッフ揃えてるよなー。アルバム楽しみ。

そして、どんどん客が嫌いになっていって楽しめなくなっている自分にも気づく。これ、ももクロと同じ現象なんだよなー。

Silent Siren

くるりまで。ここで入場規制。ギターがすう一人で、サポートがいなくなっている。ついに独り立ちということなのかもしれない。おめでとう。

ドラムセットの後ろにライトがあって、これが逆光でひなの顔が見えないのが大きな不満だった。

くるり

夏に引き続きブラボー。この編成なるべく長くやってほしいな。

特によかったのがワールドエンドスーパーノヴァで、生音基調にアレンジされてるんだけど、原曲のよさをまったく損なうことなく楽しませてくれた。思うにバインやアジカンに欠けているのは、例えばこういう選曲をするサービス精神でなく、古い曲を壊さないように育てるスキルではないかしら。くるりはそれができるので、自分で飽きないで済む。逆に育てすぎるのもアレで、松田聖子なんて赤いスイートピーをフェイクの嵐にしてしまっていてがっかりしたりする。くるりは本当に上手い。

LiSA

入場規制で1曲だけ。ちょっと不愉快なほど人がいた。なめてた。

コスモの動線が変わってるの賛否両論。おれは天幕に沿ってある程度前まで回すことで入り口の混雑を避けるのはいいと思うけど、並ぶ列を妙に長くとっているのが、アースから回るとえらい不便だったのは大きなマイナスだと思った。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

混む前に帰りたかったのだけど、お祭りセットにするって噂が流れてきたから。そして言葉通り、早々にリライトをやったので、これなら初期曲も期待できると残ったら、君という花もやってくれたので、そこで満足して切り上げ。あと聴きたいのって羅針盤と粉雪で、さすがにそこまでは難しいと思ったので。その賭けには勝った。

来年も1日ぐらい行くでしょう。

 

2015年振り返り(音楽編)

今年よかったアルバムのまとめ

1位:Bitter,Sweet&Beautiful/RHYMESTER

間違いなく一番回数聴いた。メッセージ曲、ノリ曲、おちゃらけ曲、泣かせ曲のバランスがよく、ここからライムス入ってもいいのではないかというぐらい、歴代でもリスペクト、グレイゾーンに迫る名盤だと思う。ちなみに個人的に一番いいアルバムなのではないかというのはウワサの真相なのだけど込み入った話なのでまた今度機会があれば。

 

2位:IN THE NAME OF HIPHOP/tha BOSS

間違いなく二番回数聴いた。TBHってアルバムでいうと2枚目までがやばくて、なにが違うかといえばトラックで、3枚目以降、何考えてんだかまったくわからないような不気味なトラックがなくなって小奇麗になってしまって、TBHである意味がちょっと怪しくなってきていた。それを更に明らかにしたのが今作で、外部のトラックメイカーで固めたこれも、やはりTBHに聞こえてしまい、ソロって感じがしなかった。

とはいえデキは大変によく、また、「日本のウィルスミス?はいはい」と揶揄したユーちゃんをゲストに迎えた”44 YEARS OLD”はそのタイトル通りの重みを感じさせてくれる、これ1曲でもこのアルバムを聴く価値があるといえるかもしれない。

あとは、ライムスとの曲を作ってくれたらおれ感涙なのだけどな。お互い評価しあってるのはもう明らかだし。 

IN THE NAME OF HIPHOP (1CD通常盤)

IN THE NAME OF HIPHOP (1CD通常盤)

 

 

3位:日本/八十八ヶ所巡礼

もともと素晴らしい演奏力と、それを全部叩きつけるようなアレンジで圧倒してきたバンドだけど、そこにさらにキャッチーさを増してきた。全曲に★5をつけてしまった。

日本

日本

 

 

4位:DAWN/AIMER

 素晴らしい歌唱にLAST STARDUSTというキラーチューンが加わったことで、個人的にはビョークと比肩するほどの歌姫に。

DAWN

DAWN

 

 

5位:透明な色/乃木坂46

48系もきらいじゃないけど、こう正統派(?)で上品(?)なのが珍しい昨今、これだけのクオリティーを2枚組で成し遂げたのはすごいと思う。

透明な色(Type-A)(DVD付)

透明な色(Type-A)(DVD付)

 

 

6位:Obscure Ride/cero

今年はこれだよね。去年のディアンジェロのアプローチそのまんまだけど、まあこれからの音なんでしょう。全国10万人のフィッシュマンズ欠乏症患者の光に。

Obscure Ride 【通常盤】

Obscure Ride 【通常盤】

 

 

7位:Tree/SEKAI NO OWARI 

どポップ。深瀬のキャラはアレとしても音とはわけて考えてほしいよねえ。こいつらの音をバカにするやつはホントセンスないと思う。

Tree(初回限定盤CD+DVD)

Tree(初回限定盤CD+DVD)

 

 

8位:おまけのいちにち(闘いの日々)/筋肉少女帯

レビュー書いたとおり、概ね満足はしてるんだけど、どうにももうひとつ心に残らなくてこの順位。キラーチューン大事。や、本当にいいアルバムなんだけどね。

 

9位:Tabitabi/Every Little Thing

基本ファンなので。これがあれば十分というほどのベストCDがついてるから、ここから入るのはいいと思う。

Tabitabi + Every Best Single 2 〜MORE COMPLETE〜(6CD+2DVD)

Tabitabi + Every Best Single 2 〜MORE COMPLETE〜(6CD+2DVD)

 

 

10位:SPOT/lyical school

 ちいと停滞してると感じてる日本のヒップホップシーンへのカンフル剤。ちゃんとヒップホップアルバムでありながら、アイドル。そして、ライムスを始めとした、日本語ラップの文脈にきちんと乗っているのも素晴らしい。ライムベリーとともにがんばってほしい。

SPOT

SPOT

 

 

その他

星野源は間に合ってない。

 洋楽が一つも入らなかったのはたまたまというか、まあ、あんまり聴いてもいないのだけど、いつもだったら出たら入りそうなBLURColdplay、Iron Maidenといったビッグネームがハズレだった。MUSEとADELEについてはハズレというのはちょっと申し訳ない感じで、いい曲も入っていたのだけど、全体的には眠いアルバムが多かったような気がする。もしかしたらいいのかもしれないけど、聴きこむ気がおきないというか。特にColdplayはもう次聴かなくていいかぐらい。ロキノンはこれ1位にしたんですって?マジならマジか。

話題のJulia Holterも個人的にはあんまり響かなかったな。

あと、ジャニーズは若いのはチェックしてないけど、関ジャニがちょっと期待はずれだった以上に嵐がよくなかった。なんじゃこりゃ級。キラーチューンゼロ。明らかに今までで一番よくないアルバムだと断言できる。最大のブランドなんだから、もうちょっと練れるでしょていうか練るべきでしょ。

紅白見ながらこれ書いてる。なんとか年内間に合った。

フラワーカンパニーズ/フラカンの日本武道館~生きててよかった、そんな夜はココだ! 12/19

感無量。ライブ中何度客席を見回して、こんなに大きな箱が埋まっているということに感動したか。武道館ソールドアウトですよソールドアウト。前さんも言ってたとおり、発表されたときに埋まるなんて思ってた人多分いないでしょ。ホントなんもいえねえ(流行語)ってぐらい、ただただ温かい気持ちになったよ。お客さんもみんな嬉しそうな顔だった。

 圭介がいつもどおりを二回言ったのが照れ隠しでもなんでもなくて、図柄こそこのために用意したものだったけど、いつものようにフラカンの垂れ幕だけというセット。演奏もアレンジもホントいつもどおり。しいて言うならアンコールにちょっと古めの曲を固めてやったのと、夢の列車ぐらいかね。なのにぐっとくる。お祭り感と通常営業が見事に同居している素晴らしいライブだった。

あと、前さんの衣裳か。あれは上手かった。薄暗い中出てきて、お辞儀して、ベース持って、ガーンって始まるのと同時に証明がついたらギラギラの特注オーバーオールが光り輝くという演出。オーバーオールを派手にするという発想自体まったくなかったんでこれはやられたなー。

演奏もみんな気合入ってたけど、特に竹安は素晴らしかった。今まで観た中で一番の竹安。ソロの一つ一つが本当に泣いてて、しみじみいいギタリストだなーと思った。

前も書いたけど、ヒット曲のないバンドが、ライブベースで食っていくっていうモデルケースをまたひとつ成功させた歴史的な記念日。このお祭りに参加できてよかった。

来年は1年かけて47都道府県回るってことだから、その東京以外だとフェスぐらいしか観られないかなーと思うけど、近いうちにまた観たいと思わせるようなライブでした。

ところで、いろんなところからお花来てたけど、オーケンはちょっと意外だったな。嬉しかった。

  1. 消えぞこない
  2. 恋をしましょう
  3. 星に見離された男
  4. 永遠の田舎者
  5. はぐれ者讃歌
  6. 脳内百景
  7. トラッシュ
  8. ビューティフルドリーマー
  9. 元少年の歌
  10. この胸の中だけ
  11. 夢の列車
  12. 発熱の男
  13. 吐きたくなるほど愛されたい
  14. 深夜高速
  15. 春色の道
  16. チェスト
  17. 俺たちハタチ族
  18. 終わらないツアー
  19. 真冬の盆踊り
    en1
  20. 夜明け
  21. ロックンロール
  22. 孤高の英雄
    en2
  23. 白眼充血絶叫楽団
  24. NUDE CORE ROCK'N'ROLL
  25. 三十三年寝太郎BOP
    en3
  26. 東京タワー
  27. サヨナラBABY

RHYMESTER King Of Stage vol.12追加公演 at 代官山UNIT 12/15

遠征してなかったらありがたい地方小箱セットでの追加公演なのだけど、富山に行ってるからまあ同じだろうなと、なんというかデザート気分で参加したところ、武道館に迫るほどの、歴代1,2を争うほどいいライブだった。

小箱セットは基本ベストセットなので、多少武道館的になるのはまあそうなんだけど、一応今回はアルバムツアーなので、アルバム曲を楽しみたい。その意味で、小箱セットに欠けていたのはPUNPEEで、それがいたのは大きい。おかげで”SOMINSAI”がフルでできて、アルバムツアーとしての体裁が完璧になった。

その上で活きるのが、もう一つのゲスト、ラッパ我リヤ!まさかまさかの”リスペクト”!これでライムスというか、日本語のラップに本格的にのめりこむことになった大事な1曲。ライムスだけじゃなくて、我リヤという他の世界への入り口。強面への抵抗をなくしてくれた。そんなことを思い出して顔ぐちゃぐちゃにしながら全部うたった。多分武道館以来2回目だと思う。

惜しむらくはやっぱりおれUNIT好きじゃない。ボトルネックとはこういうことですよ、というお手本のような柱。あれをボトルネックでないというのなら、あそこより後ろに客入れちゃダメだ。ギリに行ったら最初なんも見えなかった。これ、ある程度身長があるからいいけど、女子だったら致命的だよ。もしかしたら柱より先に進めるのかもしれなくても、段差の最先端は一番おいしいところだから、人が溜まっちゃってその先が見えない。せめてスタッフが仕切ってくれればまだいいのだけど。

小話。宇多さんが大箱進行と間違えて、場を静かにさせて、仁王立ちになり、人差し指を高らかに上げて、「エイヨー!」って叫んでおそらく”We Love Hip Hop”に行こうとしたところ、Dさんが苦笑いで「ノーエイヨー」って突っ込んだのクソ笑った。思い出してもまだちょっと笑える。

最後”ラストヴァース”。これ以上、ライブ、そしてツアーの締めくくりにふさわしい歌詞ってちょっと思いつかない。本当にツアー終わっちゃうんだなとしんみりして泣けた。

とにかくあがって叫んで踊って笑ったいつものライムスだけど、この日はなんだかもう一枚上な気がしましたね。

 

  

 

  1. Beautiful - Intro
  2. オイ!
  3. マイクロフォン
  4. Still Changing
  5. ライムスターイズインザハウス
  6. SOMINSAI with PUNPEE
  7. Kids In The Park ~Renaissance with PUNPEE
  8. ガラパゴス
  9. ちょうどいい
  10. It's A New Day
  11. 耳ヲ貸スベキ
  12. リスペクト with ラッパ我リヤ
  13. グラキャビ
  14. ONCE AGAIN
  15. B-BOYイズム
  16. ザ・グレート・アマチュアリズム
  17. K.U.F.U.
  18. 人間交差点
  19. サイレント・ナイト
    en
  20. The Choice Is Yours
  21. 人間発電所
  22. ラストヴァース

ガールズ&パンツァー 劇場版(ネタバレ(もへったくれもないと思っている))

100点の映像と0点の脚本。間を取っての50点ではなく、100点と0点としかいいようがない映画。

まず映像。コッテコテの二次元萌えキャラには抵抗のある向きも多いと思うし、個人的にもそんなに歓迎はしないけれど、抵抗もない。

ポイントはやっぱり戦車で、これはもう文句なく素晴らしい。精緻な書き込みと、重量感と疾走感。底が地面をこする際の火花などのエフェクトが安心してこのファンタジーに没頭させてくれる。FPSネトゲでも見ているかのように、フィールドのそこらじゅうで平行して戦闘が繰り広げられており、もうなんだかすごいぞこれってわーわー言ってたら終わる感じ。戦車とか銃器とかそういうのが好きな人にはたまらないと思う。

ネタバレというか、事前になんだか(虫の知らせなのか)カール自走臼砲が気になってWikipediaを調べてたところ、登場する作品にこの映画があって、でっかいのが遠くから飛んできた時点でカールだ!とあがった。本当はなんだなんだ?とスリルを感じつつ考えるところなんだろうけど、それはそれであり。ギミックとしかいいようがない大味な兵器を登場させてくるのなんて劇場版をよくわかってる。

カールは戦車じゃねえだろっていうツッコミもこじつけでアリにしてて、そういうのも兵器についてはなにもおざなりにしないという姿勢が見えて好印象。まあ、特殊カーボンで守られてるから命の危険はないっていう設定をかなり危うくするとは思うけど、目を瞑る。

その他にもフィンランド軍のBT-42がいかんなくその特徴、つまり速さを発揮している件は非常に熱かった。

ただ、0点と書いたように、脚本はもう全く評価できない。

まず、このガルパンという企画全体、基本的には無茶苦茶で、突っ込みだしたらキリがないのだけど、勢いと描写、そして萌えをもってそれをさせずにどうにかテレビシリーズ12話をやりきったのだと思う。なのに、今回の脚本はそこをほじくり返してしまうようなことをしてしまっている。

一番大きいのは、多くの人が指摘しているように、テレビシリーズの廃校撤回は口約束だから無効というところ。それはない。チープなだけでなく、12話の闘いはなんだったんだとテレビシリーズまで台無しにしてしまう。

名前は知らないしつけていないけど、「とりあえず危機があるの!訊くな!」的メソドとして目を瞑っていたのに、こう蒸し返されると、ついに、なんでそこまでして潰したいんです?っていう疑問が堰を切ってしまう。学校の運営費ですか?それがプロ化において何の障害になるんですか?あと、あんまりお金をリアルに言い出すと、そもそも戦車走らせて壊れたら直すのにどれだけのコストがかかるとお考え?とか、街を空にしてやってたり、いろいろ開催コストもかかるけどそれは?ていうか街も壊れてるけどそれは?もっというと空母の運営費は?もっともっというとそんなお金かけてまで空母にする意味は?などなど芋づる式にどんどん湧き出てくる。

謎の危機としてあった文科省担当者にキャラがついたのもいけない。いろいろ突っ込まれてあたふたしながらもとりあえず潰したいという意向だけはあるという謎。最後まで彼がこだわる理由は示されない。そんなに軽いキャラの一存のためだけにこれだけ話続けたの?とアホらしくなる。

オールスターをやりたいがための理由なら他にどうにでもなるでしょう。今度は大洗だけでなく、高校全体の問題として、戦車道自体を無くしたい。それを回避するためには代表校にレベルを示すようななにかを見せてもらわないといけない、とか。最悪、撤回じゃなくて、担当者は深く感動して存続に向けて動いたのだけど、最後の最後にもっと上からもう一つ上の実績を求められたとか、担当者も一丸になって事にあたるでもいい。なのに、よりにもよって最悪の、というか思いつきもしなかったような酷い理由をでっちあげてきたもんだ。悪手にもほどがある。まさか田舎の生活を描きたかったから?あそこタマフルでも言ってたけど、苦痛なほどにつまらないよ?

その無茶をしてしまったのに端を発して、他にもいろいろ。

レギュレーション問題

テレビシリーズのときからレギュレーション、特に台数は怪しくて、じゃあ単純に大洗8台に対して100台もってきてもいいわけ?フラッグ戦とはいえ、その台数でフラッグ車を囲むように守ったらノーチャンスでしょ?また、白旗の基準もよくわからないというか、当たるだけじゃダメで致命傷じゃないといけないというのなら、口径の問題は大きいでしょう。アンツィオなんて勝てるわけないでしょ。戦車道って剣道とかそういう扱いなんでしょ?じゃちゃんとしなきゃダメじゃん。

まあ、それはテレビシリーズではよかった、というかごまかし通した。でもここにきて30対8だけど殲滅戦ですなんていわれたらおいおいおいおいおいおいってなるじゃない。他の高校が助けに来てくれる以外ではそこから先の作劇のしようがない=カタルシスにならないじゃない。どうにかなる可能性も0ではないけどさすがきつい、っていう状況だから活きるメソドでしょそれ。これもテレビシリーズにまでダメ出しが及ぶ悪手。

ソ連軍オマージュ

別に死ぬわけじゃないっていうか、死なないっていうのをすごく大きな幹に据えて、それで成り立たせてる感動もある代わりに、このメソドは諦めるべきでしょ。死が前提にあれば泣けるところだけど、死なない前提だからただのショートコントにしか見えない。しかもどうしてもとそれをやるならカチューシャは単騎でも獅子奮迅の活躍をするとか、犠牲になった甲斐があったという明確な描写が必要だったはずなのにそれがなかった。

日本軍オマージュ

命令には絶対服従が日本軍人でしょ。退却を突撃と勘違いするというのはまだ笑えたけど、作戦上の撤退(日本軍なら転進というでしょ。あとでは言うけど別に成長してとかではないし)命令を無視して突撃したがるのは笑えない。「でも、であります」などという言葉はないはず。あとしつこい。

新キャラ

フィンランド軍である継続高校は誰なんだよ。フィンランドだからスナフキン風不思議ちゃんってのはまあいいよ。でもお前らが合流してくれる理由はなんなのさ。誰だかもわからんのに大洗に思い入れる理由なんかもっとわからんから、合流してくれるのだって、ああ、まあ、ストーリー上の要請、つまりご都合ですよねとしか思えない。

新キャラってのとはまた違うけど、アンツィオを既存キャラ扱いとするってことはOVAまで観てる前提だよね?冒頭に3分の説明映像をいれるとかしてるけど、一見さんに向けてるのか既存ファンに向けてやってるのか、ちょうどいいところを狙ったようで、ぶれているという感想になってしまった。

そしてなにより大学選抜チーム。それなりに尺を割いた島田すら何が天才なのか、単騎の操縦なのか戦術なのかがわからないし、ボコが好きとかいうのも最後まで大して活きない(ていうかボコ自体まったく不要)。そのチームメイトに至っては完全な空気で誰が誰なのかもわからないレベルだった。ライバル、ラスボスがそれで盛り上がれってのは少々厳しくはないですかね。

とはいえ

よいとした戦車戦が殆どの映画だし、脚本をガン無視して、劇場の大音量でならもう一回観たいと思うぐらいには気に入っている。ひとつ贅沢をいうならBT-42とカール、あとカルロヴェローチェ以外戦車(?)の特徴が見えなかったのが残念かなー。

追記

roberto.hatenablog.com

 

陽気なギャングは三つ数えろ/伊坂幸太郎

ものすごく久しぶりに、伊坂作品の、文書をぐいぐい読む楽しさを味わえた。

おれにとって伊坂幸太郎はデビューからずっと読んでるほぼ唯一の作家で、オーデュボン見つけたときはこれはと思ったもの。なので、長らく楽しく読んできたのだけど、さすがに息切れを感じるところがあって、終末のフールを最期、つまり、陽気なギャングの二作目からこっちずっと全然ピンときてなかったのです。特にゴールデンスランバーが評価が高く、映画も好評だったことで世間との乖離を感じて、一応読むけど義務感を疑うぐらいにまで興味が後退していた。

 伊坂作品のおもしろさって、散りばめられた伏線が回収されていく気持ちよさと、会話の軽妙さだったと思うのだけど、さすがにその作風だけでやっていくのに限界を感じたのか飽きたのか、上記のゴールデンスランバーあたりからめんどくささみたいなものが醸しだされてきたと思う。この点、この陽気なギャングの3作品目は原点回帰というか、特に会話の軽妙さが存分に楽しめてよかった。

ただ、これ、続きものだから最低でも1作目は読んでないとおもしろくないです。主要登場人物の能力と性格の説明が殆どないから。2は読まなくてもいいから、1だけは押さえてからどうぞ。1は名作だし。

  

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

 

 

高橋徹也 New Album Release Tour Final 「The Endless Summer 2015」 at 下北沢CLUB Que 12/4

リリースツアーというところに申し訳ないけれど、そのアルバムは買っていないし、というかそもそも何も持っていない。友人が前々から激推ししてて、オススメ曲を焼いてくれたのを聴いてみたら確かによかったので、ではせっかくだからと来てみた次第。

まず、歌が圧倒的に上手い。音源で聴いていた通りで、一瞬リップシンクを疑ったほど。よく、フェイクを入れまくることで歌の上手さをアピールする歌い手がいるけれども、正直あまり好きじゃない。大概の場合曲の良さを損なうから。玉置浩二とか吉田美和とか。その点、高橋さんは曲の良さを素直に出してて、また、出せることがすごいのだと知らしめてくれた。

そして、演奏、特にベースがクソ上手い。鹿島達也氏。フレージングのセンスもグリッサンドを効果的に使うフィンガリングもトーンコントロールもなにもかもが完璧。えげつないグルーヴ。他のメンバーが悪いということは全くないのだけど、ここまでのベース弾かれると、こういう歌モノではなく、内橋和久みたいなタメ線のプレイヤーとのバトルっぽいライブも観てみたいと思わされる。

その内橋和久との共通点として、この日唯一の不満を書くと、衣装があまりにも普通のおじさんの普段着過ぎ。主役の高橋さんと、ドラム(タバコジュースの人とのこと)はいいんだけど、他がちょっと、それでステージに上るのは、ってレベル。

音楽聴きに行ってるんだからと思われるかもしれないし、この規模で衣装をいうのはって向きもあるだろうけど、例えばミッシェルがこんなカッコでやってたら売れてたかね。小箱から脱出できなかった可能性すらあるんじゃないかしら。

規模の大小を問わず、ショーである以上、見た目はすごく大事だと思う。そこに力を入れることで逃さない客もいるのではないかと考えると非常にもったいない。この演奏、安スーツでも揃えたらカッコいいよきっと。