韻踏合組合 夏の陣2016 ~REAL GOLD~リリースツアー at CHELSEA HOTEL 6/5

フリースタイルダンジョンの流行なんて吹けば飛ぶようなペラいもんだなーと思わされる客の入り。てか、韻踏が単独やろうってのにこの箱って時点でもうお察し。ライムスとかTBHみたいに直接関係ないものとして活動してるならともかく、ERONEが審査員、HIDAがチャレンジャーで出てきてるのに、って考えたら。アルバムも出たばっかで、一網打尽はリミックスで盛り上がっているように見え、クラシックになったのかと思ったこのタイミングでねえ。最低でもクアトロ、できればリキッドぐらい埋められないと先がないよ。なんもいえねえ(流行語

ライブ自体は文句なく最高でしたよ。その一網打尽だけでなく、前人未到とか揃い踏みみたいなマイクリレーの決め曲全部盛りぐらいで楽しかったし、Y'Sゲストで釣りに行くみたいな、ちょっとはずしたのもあった。

日本語ラップ界の空洞化現象ってのがおれなりにあるんだけど、今度書きます。

アイアムアヒーロー(ネタバレなし)

まず、おれにはそのジャンルっていうだけで基本的に敬遠するものが4つあります。リアル宇宙もの、タイムリープもの、記憶を失うもの(記憶喪失ではない)、そして、ゾンビものです。

ではなぜこれを観に行くことにしたのかという話ですが、ちゃんと読まないことには(そして終わらないことには)断言できないけど、マンガアイアムアヒーローはお話としての決着を用意している、ある意味ゾンビ物へのアンチテーゼでもあると思っているのですよね。なので映画にもそこを期待したのだけど、ということです。

ここでおれが感じているゾンビ物、そうカテゴライズされるための要素ってものが肝心で、大雑把にいっちゃうけど、概ね発生原因がよくわからなくて、噛まれる等で感染して増殖し、遅いの速いのバカなのそれなりに賢いのと種類があって、頭を潰されないかぎりは動く、というもの。

ここまで共通で、「考えるな」で済ませればいいんだけど、殆どの場合そうはいかないというか、その増えていく過程と恐怖こそが見せ物であるわけです。となると、日常(舞台、キャラ説明)→発生(ゾンビのタイプ説明)→増殖(恐怖、パニック描写)が全て必要で、それだけで映画だと1時間強はもっていかれる。

ていうか、なんなら主人公(たち)が命からがら逃げた先で、既にある程度の対応策をとっているチームがいた、ってとこまでセットじゃないですか。さらにそこで既存の価値観では優位に立っていたものが異常な状況下でそのピラミッドが危ういってとこまで大体あるじゃないですか。様式美ですよね?多分。

つまりお話の介入する余地が少ない。さらに言うと、映画WWZなどの例外はあれど殆どが破滅エンドで、どう解決するのかっていう興味には応えない。いかにも形をなぞっているという思われるZアイランドにもそれは表れている(逃れたところで終わってもいいのに、アレを足すわけだから、様式として求められるものなのでしょうという判断)。

余地が少ない、ではまだちょっと不足かもしれない。まず間違いなく破滅であるというのが前提になると、逆にまったく緊張感がなくなるのです。カッコいい自己犠牲があったとしても、いや、いうてもあいつとあいつ、加えてもしかしたらあいつが助かるだけで後は死ぬんだからどうでもよくね?と思ってしまうのです。

話戻ってアイアムアヒーローだけど、タイトルからしても、英雄の成長ってのは大きな主題なのだろうし、ペラ読みでもそれなりにいろいろ起きてはいるよう。だから、先に書いたように、プラスアルファを期待したのだけどやっぱり典型的なゾンビ映画でしかなかった。これは非常に残念だった。

大事なのは、おれがゾンビ映画を好きではないということで、この映画がダメというのでは決してありません。ほとんど突っ込みどころもなく、盛り上げどころも十分あり、楽しいものなのだと思います。ゾンビが嫌いでなければ。

いうても楽しめたのは、有村架純がバカじゃねえの?やんのかコラァ!!っていうぐらいかわいかったからだと思います。役者陣はみんなよかったけど、それはもう突っ込みどころなしって書いたから。や、ウェルメイドだと思いますよマジで。

追記

タマフル聴きました。本筋ではなかったけど、宇多さんよりWWZの終わりは酷いという言葉がありましたので、やっぱりそういうことなんでしょう。

あまり映画を観ない人に今観に行くならということでズートピアとこれを勧めてたけど、心底どうかと思います。様式に則ったゾンビ映画はゾンビに興味がなかったらおもしろくない。なぜだかゾンビ好きの人ってこれが(心の底では)わからないことが多く感じます。

追記2

原作読み追いつきました。仕方ないけどここまでくるともう完全にミスリードというか、映画観て理解したのとはまるで違う話だよね。マンガおもしろいですよ。映画もこれはこれでいいものだけど、関係ないものだと思った方がいいです。

追記3

ものすごく遅れて、自分でこの記事読んでて思い出したので書きます。マンガのエンド酷かったです。ならもう映画のこれでいいです。

ズートピア(後半でどうしても気になるツッコミのためにネタバレしますが、区切りはちゃんとつけます)

まず、基本的に絶賛です。特に劇場でってこともないけど、乗るしかないこのビッグウェーブだと思うし、多分それなりにロングランになるでしょうから、せっかくだしいかがでしょう。

教科書的といってもいいほどかっちりと作り込んだシナリオをさらにブラッシュアップしつつも、ケレン味、イヤ味は残すことできれいすぎるものにしないというところまでの高次元な隙のなさ。

しかし、ネットに溢れている、メタファー解説については大いに苦言を呈します。これについてのおれの意見は真逆で、製作者が腐心したのは、これは~のメタファーと断言できないようにすることだと思います。

肉食獣はアメリカの黒人のメタファーですか?羊はプアホワイト?それで説明つきます?つきませんよ。黒人がアメリカを体力によって支配していたなんて歴史はないでしょう?そもそもズートピアにおける肉草の割合は1:9なんですって。裏があることを否定もできないけど、であればまず、単純に数が少ないのだから、要人やインテリが殆ど草食っていうのならそんなの当たり前のことです。ていうか要人って言える存在って市長、副市長、署長ぐらいしか出てきてませんよ。さらに言えばキャスターはユキヒョウです。つまり、そんなこと特に触れてないんです。仮説が当てはまらないなら諦めればいいものを、名誉白人まで言い出すともう陰謀論ですよそんなの。

メタファーということ自体はそうなんです。ただ、それはこの社会のこの問題の、ということではなく、日本人と在日韓国人かもしれないし、スンニ派とシーア派かもしれない、どこにもあるような様々な偏見や無理解の、です。これはあれのメタファー、これはあれの、すごいすごいって言っているひとは、評価をしているようで矮小化しているのです。きっとそんな限定した話はしていない。

そして、もちろん、ギャグ、ユーモア、ウィットの部分は別です。例えばレミングスはもうリーマンでしょうね。かなりどぎついネタだと思いますけど、この辺の正しくなさが、逆に風通しを良くしているという宇多さんの指摘には全面的に同意します。

まっさらな気持ちで、それなりにネタバレを避けていけばまず楽しめると思います。という意味ではあまり語れることもないので、そのうち補記するかもしれないけどこんなところ。

所謂作家性に頼らず、理屈理屈、技術技術で突き詰めた、プロダクトとしての映画という意味で、これに限らずディズニーピクサー作品が評価されるのは、個人的に乗り切れないものを感じつつも理解はします。ただ、で、あるならばおかしなところはあってはいけないとおれは考えます。その意味で、どうしても解せないことがあったので、それを以下にゴリッゴリのネタバレで書きます。

 ここからネタバレを大いに含むツッコミ

ドライバーのブラックジャガーが、副市長一派によって凶暴化させられますね。その後、ジュディたちに繋がれた彼は、市長の一派に連れ去られます。これはおかしくないですか?

このシークエンスにより、犯人は凶暴化を招き、連れ去る存在であるとミスリーディングが行われます。しかし、実際は違い、凶暴化は副市長の、隠匿が市長の思惑であることが後にわかります。さて、どうして市長はあそこでブラックジャガーが凶暴化することを知っていたのでしょうか?知っていた、とまでいうのは、即座に、警官たちが到着するまで(5分10分ですよね)にブラックジャガーの身柄を押さえるだけの人員と車を用意していたということになるからです。だからそのミスリーディングが成立する。

更にいうと、本件は、失踪事件であり、凶暴化事件ではない。凶暴化事件であると知っているのは厳密には副市長だけ。市長は保身のためもあってか、理由はわからないけどとにかく隠匿しなければという立場。では、どうやって一件目を押さえたのでしょう?押さえなきゃいけないと思ったのでしょう。警察も知らない(警察は動かせないどころか知られてもいけない存在なのだから)。そして、その一件目だけで、対象が肉食獣なのだと何故言えるのか。言えるだけの理由がないならなぜあんな大規模な施設を用意し、人員も手配できたのか。

市長は副市長から、ジュディが失踪者の捜索に動く報告は一応受けていたわけで、不都合な事実を突き止められたら困るから見張らせていたら「たまたま」出くわして、「たまたま」人数や道具や車も揃っていたからイレギュラーとしてすぐ対処できた、など、無理やりですけど説明できないこともないです。

しかしそんなこといったら警察では同じ動きを正式に複数チームでやっているわけで、それ全部に同じ対応してたのか?ていうか見張ってどうするのか?見つけそうになったら邪魔するのか?ていうかていうか市長からしたらどこで発生するかノー手がかりなわけだから、対処療法にもなりませんよね、などなど。

だから、これを副市長がもくろんだ時点で、本来市長(というか広く肉食獣)にはノーチャンスの案件です。なのに発覚しない。副市長はおかしいと、なんなら焦っていてもおかしくない。だから、ジュディをけしかけて、その目の前で凶暴化を起こすというのはおかしなシナリオではないけれど、それが効果的なのは誰だかわからないけど邪魔するやつがいるのだから、なら発見者もこっちで手配してしまえというところなのに、それでも即時対応される。なんですかこれは。

そもそも、狙いが肉食獣には凶暴化のリスクがあるとアピールしたいのであれば、もっと町中で、真っ昼間にやるよろしという話も。なんで面倒なマフィアの知り合いなんか、夜の車中で狙うかな。

ということで、この疑問は看過できません。とはいえ、ちと余計なことを考えていた時間帯もなかったとはいえないので、見逃したこともあるかもしれません。だから、勘違いですよ、という指摘は歓迎ですので、どこでもやってください。探します。

人間交差点 2016 5/15

Creepy Nuts

このために朝からお台場へ。宇多さんがラジオで言っていた通り、同じような人が沢山いて初手から結構な入り&盛り上がり。

20分という短い時間でみんなちがって、合法的、トレンチコートマフィア、そして聖徳太子フリースタイルと求められるものはきちん出してきた。持ち弾自体そんなもんなんだから100点でしょう。1MCにありがちな声の薄さを松永がだいぶ補っていたのも良かった。Dさんがこの前にライブを観て、おれら(ライムス)負けてるぞって言ったらしいのだけど、それはさすがにないとしても、今の子にとってのライムスなのではとは思う。

ちなみにRが聖徳太子やるのと同じぐらいの尺、松永にもスクラッチショータイムがあった。かっこよろしい。これだけ皿回すの上手くて、服は洒落てるし、顔も結構しゅっとしてるし、代官山でレギュラーのパーティー持ってたっていうし、クリーピーの音源ももちろんそうだけど、ライムスに提出を求められるぐらいのトラックメイカーなのに26歳童貞って、お前むしろモテない要素ないだろ。どれだけ闇深いんだよ。ボスもびっくりだよ。

SUPER SONIC

ごめんなさい。おれタローダメなんです。歌い上げるタイプのラッパー。

RIP SLYME

ここから本番で40分。いうても40分。短いよなーと思ったけど、その分、よくいえば遊び、悪く言えば自己満足の選曲が減る。メモってないので怪しい記憶頼みだけど、楽園ベイベー、ファンタスティックのスーパーキラーチューンをかましてるし、JOINTも多分人気曲。プラスおそらく気候を鑑みての熱帯夜。まあ、文句なし。ひとつだけよくわからないのが、Watch outをやったんだけど、これR25で1曲しか持ち時間ないのにやった曲なんだよね。この日もこの短い時間につっこんでくる。リップとしては取り立てて言うほどの曲じゃないと思うんだけど、彼らのとってはなにか特別なのかしらね。あのフリがやりたいだけなんじゃないか疑惑も。

三浦大知

曲名などは記憶しておりません。歌もダンスも素晴らしく、No limitが聴けたのも嬉しいけど、特別好むタイプのアクトではなく。

KOHH

ルックスはすごくいいと思います。が、音楽、というかトラックが好きじゃないです。ので、ラップ自体の評価も難しく。

あとでりょーじくんが言ってたけど、SUさんはKOHHに恋してるそうです。

OZROSAURUS

ある意味本日一番のお目当て。その週のフリースタイルダンジョンでOGのライブが流れて、これは生で観なければと急いでチケットを取った次第。

そのOG、その前の曼荼羅といった、現編成での曲はまあいいです。期待通りカッコよかった。問題なのは、この編成になったというニュースに接したときに一番懸念した、好きだった過去曲が姿を変えたり消してしまうんじゃないかということ。これは杞憂でした。多分彼ら自身もそういう懸念は理解しているのだと思う。AREA、WHOOOといった、特に古い、しかし圧倒的な人気曲をこの編成でかましてくれたのだけど、バンドは単純にプラスアルファでした。少しも元のカッコよさを損なっていない。いやー、いいもの観た。これはバンド好きの人にも響くだろと思った直後、サマソニ出演が発表された。相変わらず呼び屋としてだけはセンスがいい。

MONGOL800

本日一番の何故?枠。Rのモンゴル800っていうワードを含む、とびきりのフリースタイルで呼び込み。

ここ、基本ヒップホップのフェスなのに、なにこの通りっぷり、人気。小さな恋の歌で、キヨサクが思い切ってソロ明けを全部客に振ったら会場大合唱。いや、ホントすごいよ。しびれた。カッコいい。

流行りか景気か能力かなんか知らんけど、こういう、ジャンルを問わずみんなが歌える曲っていまかなり少ないよね。

LECCA

ごめんなさい。レゲエもあまり得意じゃないんです。でもSky is the limitが聴けたのは大きいかな。

さかいゆう

多分3回目なんだけど、毎度毎度、最初あーソウルとかだなーとちょっと眉間にシワが寄るのだけど、あ、これは好きだなって曲がちょいちょいあって、終わる頃には結構満足してる。いい加減CDを買って普通にファンになるべきなのかもしれない。ジャスミンって曲がよかった。

サイプレス上野とロベルト吉野

ここも時間が少ないからか、通りのいい曲+ライムス(宇多丸)ゲストのお家芸。サ上もロ吉もステージングが上手いよね。とりあえず呼んどけ感ある。

一点かなり不思議だったのが、オープニングSEがBatteryだったんだよね。KOHHも物販のTシャツがメイデンで、君らメタラーなの?

ゴスペラーズ

それなりに楽しみにしてたけど、ライムスでいい場所取りたいので少し離れて。

ここも短い時間で、しかもちょっとアウェイの現場だからかこれなら知ってるだろセット。とりあえずおれは永遠にと、どうせやってくれるだろうのポーカーフェイスが聴ければそれで満足だったんだけど、振り付けとか楽しかったし、ファイルレコード所属直前の昔話からのランナウェイとかも嬉しかった。

爽やかに流したけど、ポーカーフェイス、ついに聴けたって感じですげえ感動してたんですよ実は。ずっと歌ってた。

RHYMESTER

トリ。いい意味で相変わらず特別いうこともなく、ただ、持ち時間は他と変わらないはずだったのに、1時間やったね。そうこなくちゃね。

ゲストはPUNPEEでPARKと、さかいゆうがコラボ曲とアマチュアのセッション。

そして、最後、新曲!!スタイルウォー。ビートはワタ坊。すげえカッコいい。曲もカッコいいけど、フリースタイルバトルの盛り上がりの中、自分たちの立ち位置を高らかに宣言するような曲。無視も迎合もしない。これがライムスターである。

フェスとしての評価

何度も書いたけど、40分ていう、最初短いと思った持ち時間は実は結構絶妙。セットがいい感じになるし、ちょっとだけ食い足りないぐらいってのも悪くない。あえて絡みのあるメンツを集めたんだろうけど、レアなライムスゲスト曲もたくさん聞けて大満足。

会場はアスファルトなので、季節もあって暑いのだけど、何箇所も日除けテントや休憩所があって、地獄感はなく、これは大変素晴らしい。

飲食も不足なく、ライムスメンバーがそれぞれプロデュースしたという、特別メニューも楽しかった。ちなみにDさんがビールにコーヒーリキュールとオレンジピールだったかな?のカクテル。宇多さんがデリーに可能な限り近づけたというドライカレー。JINさんがベーコン、唐揚げ、ビーフそれぞれ×2の串。全部堪能しました。
割と近いということもあって、これは多分来年も行くね。初年行かなかったのも後悔しているよ。

ちはやふる 下の句(ネタバレかもしれないことも書くけどそんなに気にしなくても)

上の句が気に入ったので、初日に観てまいりました。

その上の句については以前書いた通り。

roberto.hatenablog.com

前提として、日本映画流行りの、前後半制についてはよく思っていません。そして、これでもやっぱりそのよくないところがばっちり出てしまったと思います。

スタッフが同じなのだから当然ともいえるのだけど、引き続きちゃんとしてます。致命的といえるような欠点はない。しかし、上の句から通算すると4時間にもなる長尺なので、同じことをやっていたのでは飽きるのです。例えば絶賛されてたマッドマックスでも、あれが更に2時間続くと考えてください。さすがにあの作劇法では無理があるでしょう?それをやってしまっている。ちゃんとおもしろい!っていう、ちょっと失礼な驚きも、キャストの再現度も、原作の再構成のうまさについても、すべてもう知っていることであり、むしろ今度はそれらがハードルの高さとして立ちふさがります。その点で、今作は、単独としたら観られるものでしょうけど、少々厳しいです。

引き続き機能したものもあります。肉まん君、矢本悠馬のケレン味です。数少ない原作から味付けを変えているポイントなので、その点だけでもこの飽きる問題に対しては有効なのだけど、やっぱりここは矢本悠馬のもつ空気でしょう。これがなんとか興味を繋いでくれる。そして、繋いでくれた場を締める大きな存在として、今作最大のポイントである、松岡茉優の詩暢ちゃんが登場。

これはもうナッシンバット完璧です。スチルの時点で見せていた説得力をさらに上書きする怪演。可愛く、美しく、強く、そしてあたまおかしい。ルックスもさることながら、セリフ回し、かるたの取り方、いずれも文句なし。出てきた時点で画面とお話が同時に動く。場内で一番笑いが揃ったところも彼女の力でした。正直下の句は蛇足だと思うのだけど、やらなければこの詩暢ちゃんが観られなかったわけなので、かなりの痛し痒し。

一本の映画としてはオススメできるものではないけれど、上の句を観て、もっとこのキャラたちを観ていたいと思った方にはちゃんと応えているものだと思うし、矢本、松岡のおかげでそれだけではないものになったとはいえます。

以下、少々ネタバレともいえる、脚本、演出のダメ出しです。原作にあるから、という答えのものもあるかもしれないけれど、あくまで一本の映画として。

新にかるたをやめさせたくないというのはわかります。だけど、それとクイーンに個人で勝つってこと、どれだけ関係あります?少なくともおれにはまったく何を言っているのかわかりませんでした。もちろん、とりあえずはそれでもいいんです。それなりの理由であったり、無茶苦茶であったことがあとで明らかになったりすればいいんですから、手はいくらでもあります。そして、この映画では後者寄りのやり方を選んでいます。ただ、それが間違いだ!ごめん!ってなるロジックがまったくわかりませんでした。どう間違えていたのかわからないし、なぜそれが間違いだと認識したのかもわかりません。何故わからなくなってしまったのかというと、千早の出稽古先の北央で、太一に諭されるシークエンスがあるからです。その前から太一が千早の暴走に気づいていて、苦言を呈している描写があります。そして、その極めつけともいえるのがそのシークエンスで、あそこで千早が折れたなら、暴走の理由がただの純粋な意味の分からない勘違いで、それを太一のおかげで気づけた、ということがいえます。しかし、千早はそこで拒絶します。するとどうなるか。ただの勘違いではなく、視聴者や太一の考えの及ばなかったもっと深い理由であるか、もしくは千早にとって太一が重要な存在ではない、もしくは両方という見え方になる。で、少し話が進んで、勘違いは意味の分からないまま、須藤の語る、伝統の話で打ち砕かれます。えええ!?より直接的なチームメイトの話を、幼なじみであり、主将、現役の理解者である太一の言葉は響かなくて、いろんな意味で他人の言葉は聞くの!?なんで?そしてなんでそれが新がかるたをやめることの解決になるの?君の悩みってなんだったの?とわけがわかりません。でたらめだというよりは、わかるように作劇されていない、ということです。

また、それに関係するのだけど、この映画前後半通して、原作よりもチーム感に重きを置いているように感じます。で、この下の句でも最終的には個人戦であっても、いや、だからこそ絆みたいな落とし所になっている。それはいいです。ただ、これを言うのに、二本柱になっていて、ひとつはこの千早の、新にかるたを続けてもらいたい話。もうひとつが、太一の、もう一皮むけない話。で、前者はギリいいとして、後者の解決として、新の言う、一番楽しかったときをイメージするというのが出てきて、この二つを新をキーマンにして結びつけています。これがまずい。君ら(太一、千早)の一番楽しかったときってのは、幼少期ということでいいんですか?いま、一緒に戦ってくれている肉まん君、机君、かなちゃんではないんですね?太一君、あなたは今のチームを軽んじている千早を批判していますね?であるならば、ここで思い出すべきは初めて今のチームがまとまったときであるとか、もしくはそういう話とは関係しない、初めて札を取った喜び、とかではないですか?おかげでクライマックスで試合に出ていない3人が手を繋いで絆をアピールしているのが、少々空回りに感じました。君らはそうでも、どうもこの二人はより大事なものがあるみたいよ?みたいな見え方。しかも、その肝心のチームの戦いである団体戦は千早が参加してないわ、結果どうなったのかよくわからんわで、かなりおざなり。と思ってたら、個人戦こそ団体戦?ここに不整合を感じて気持ち悪いのです。

もう少し細かい話。参道の真ん中は神様の通り道という話。先生にそれを言われた直後にほぼノータイムで詩暢ちゃんが、それも割とさらっとそこを通ります。わかります。原作にあるのも知ってます。ただ、映画的にいうと、その間、演出の軽さのいずれも、ややダサく感じます。さらに割と直後に、会場入りする詩暢ちゃんが階段の真ん中を、ものすごくダサいカッコで通ります。ほぼ天丼です。伏線まいて直後のその短時間に2回?って思いました。個人的にはダサいカッコだからこそ、それでも何故かにじみ出る凄みみたいなのフィーチャーで、後者の一回にした方がよかったのではないかと思います。もしくは、もうちょっと間をあけるか。

最後に、これは結局の話前後半通してのことにもなるのだけど、上の句と比べると、下の句の話の落とし所は曖昧です。前述のように、絆の説得力がないことが一番大きいのだけど、前後半っていう設計の難しさです。上の句がこけたら下の句はもっとひどいことになるので、必然的により力をいれないといけないのは上の句です。そのために上の句で、後では使えないエピソードを沢山捨てています。例えば襷の件とか、先生が徐々に理解を示し、決定的に味方になる件とかすべて下の句ではいまさらです。ちょうどよく配分したら両方よくなるかもしれないけど、これは仕方のないこと。だからいい映画にしたかったら前後半やるなとしかいえません。

さらに、続編決定とは。耳を、目を疑う光景It's OKです。原作でも(おそらくはこのマンガの肝であった)群像劇的なステージは終わり、おそらくもう締めにかかって、今度こそ千早がクイーンに挑む件に絞られます。ギミックとして使えそうなのも名人周防のところだけで、それも詩暢ちゃんほどまでに美味しいキャラではありません(ヤロウだから)。それでも監督の手腕や、役者陣のがんばりを見るに、期待できないこともない。ないけれど、それを聞いたときの率直な感情は、嫌悪です。

繰り返します。キャラクター、原作再現ものとして大変優れていて、素晴らしき詩暢ちゃんも出てくるし、その意味では観て損はありません。しかし、お話としては残念ながら蛇足です。上の句で十分まとまっていたものを尻切れトンボにしてしまいました。

IRON MAIDEN The Book of Souls World Tour 2016 両国国技館 4/21

2006年は金もなかったし、もうひとつ気分でなかったのでスルーしたのだけど、2008年は出遅れて取れず、2011年はチケットあったのに震災で流れ、ようやく待ちに待った初のメイデン。升席14kというかなりのお値段で、5年前のAC/DCがアリーナスタンディングが12kだったことを考えるといかがなものかと思っていたのだけど、キャパが大違い。約10kの両国国技館をステージで半分潰す5k~6kで、自家用ジャンボでのりつけ、巨大演出もやるスタジアムバンドを観られるという贅沢。これなら十分納得。

とりあえずバンドが出てきただけで泣けた。生きてる!動いてる!

ブルースのお歌がもうむちゃくちゃ上手い。ぱっと聴き上手く聞こえないタイプだと思うんだけど、声量も音程も文句なし。しかもパフォーマーとしてちょう優秀で、動きまくる煽りまくる。特にお猿さんパフォーマンスは本当に微笑ましくて、ブルースもお客さんも笑顔でうきゃうきゃ。アートワークも含め、本来強面の音楽であるのに、この楽しさ。でも決してリスペクトを失わない絶妙のライン。ホントわかってるよなーと感動。

そして御大スティーヴ・ハリス。この方の存在が今のメタルの立場を確立したといっても過言ではない。というのはもちろんこのバンドを興し、その中で素晴らしい曲をたくさん書いてきたというのもあるけれど、なによりベース人口への貢献。

やっぱりメイデン聴いて真っ先にやりたくなるのってベースだと思うんですよ。どんなにボーカルや曲調が変わろうとも、これぞIRON MAIDENであるという確固たる音像があって、それはこのバキバキと3連を刻むベースサウンド。どんなギターヒーローやボーカルがいたって、ドラムとベースがいなきゃ世に出ることは難しく、そのためにはキッズが憧れるヒーローってものが欠かせないのだけど、ドラムはともかくベースはそれが極端に少ない。80年代までにいたのって、強いて言ってギーザーバトラー、クリフバートンぐらいではなかろうか(ビリーシーンはメタルではないし、また文脈が違うのでここでは除外)。それ以外は、プレイヤーの力量問題もさることながら、とにかく聞こえないミックスが主流だった。これはつまり、バンドの中における序列みたいなものが大きく影響していたのではないかと。例えば、メタリカがジャスティスで極端にベースの音量を落としたのが大きなその証左のひとつと言える。その意味でスティーヴは最強だった。彼がいなかったらメタルのベース人口はどれだけだっただろうか。

技量的なことをいっても、メタルという音楽は殆どの場合ベースがピックを使ってギターと同じラインを弾くので、言ってしまえば、ベースの弾けないギタリストはいない、ということになる(逆は言えない)。しかしスティーヴハリスのベースはそうではない。そもそも指弾きであり、しかも前述のあのバキバキとした音をコントロールし、出し続けるってのはベースだけの技術であり、多分たとえインギー様でもかなりの練習なしにはできない。そして、これはその前述を覆すようだけど、ギターとのユニゾンフレーズが多いのに、それを難なくこなしてしまう。”The Trooper”なんかが顕著だけど、ギタリストは試しにあれを指でやってみてほしい。ピックならまあなんとかできるものが、左も含めて全然できない、なんてことになりませんか?(できちゃう人もいるでしょうけど)つまり、メタルギタリストはベースも弾けちゃうっていうのは、基本的なリフの話であって、メイデンには当てはまらない。なぜなら、メイデンの曲はギターで作ったリフにベースが合わせるのではなく、ベースが先にあるから。すげえ弾けるスティーヴを基準にすべてが構成されるから。

とまあ、長々書きましたが、そういうようなことを短い時間で確信させてくれる、スティーヴハリスでした。メタルベースの神様でした。

そして、期待に応えてくれた演出。巨大エディー、中型(3mぐらい。これが動き回るのが一番すごいと思った)エディー、悪魔像、曲ごとに変わるバック(布)、炎ともうサービス精神全開。明らかにスタジアム級用のそれで、このキャパに持ってきてくれたってのは本当にありがたく、チケット代も納得という理由のひとつ。

ということで、じゃあ満足かというと、正直なところセットリストにはがっかりも。先に書いてしまうと”Aces High”がなかった。次に楽しみにしてた”2 Minutes To Midnight”もなかった。これは痛い。どちらかが締めにあれば大満足という印象になったと思う。終わりよければすべてよし。それが”Wasted Years”ってちょっとアレでしょ。悪くもないけど締めじゃない。で、締めがいまいちだったことでがっかりっていう印象になるのは、その他の部分での満足度の低さ。や、わかってるんです。これがThe Book of Soulsのツアーで、それがもう一つ好きじゃないおれがそう感じるだろうなということは。しかしそれにしても、最新アルバム+クラシックっていう構成であるなら、誰もがやって欲しいと思うような曲はできるだけ入れてほしいし、そうでないなら。お?それやんの?っていう嬉しい驚きのひとつやふたつは入れて欲しかった。例えば”Be Quick Or Be Dead”ぐらいかしら。

”Be Quick Or Be Dead”って挙げたのにはもう一つ理由があって、トリプルギターってどんなもんかと思っていたのだけど、バッキングはもう全然わからなくて、ソロでだけ個人の味が出るという感じ。で、エイドリアン、デイヴ、ヤニックの順に多く、これがちょっとおもしろいのだけど、技術的には逆に感じられた。その多分一番うまいヤニックは2,3曲しかソロ弾いてなかったと思う。可哀相。だから、加入当時の、主役だった頃の曲をもう一つぐらい、と思ったのです。

で、メイデンって基本ツアー中にセットいじらないバンドだから、事前にわかってたってことなんだろうけど、割と多くのお客さんが”Wasted Years”が終わったらさくっと帰るって、ちょっと寂しくありませんかね。素晴らしいパフォーマンスだからあとちょっとでいいからっていうアンコール本来の意義を問いたくなりましたね。ごくまれにだけど、他のバンドで武道館レベルでもガチのアンコールやってくれたことありますよ。

ということで、食い足りないので、次を待ちます。そのときは”Aces High”、お願いしますね。

  1. If Eternity Should Fail
  2. Speed of Light
  3. Children of the Damned
  4. Tears of a Clown
  5. The Red and the Black
  6. The Trooper
  7. Powerslave
  8. Death or Glory
  9. The Book of Souls
  10. Hallowed Be Thy Name
  11. Fear of the Dark
  12. Iron Maiden
    en
  13. The Number of the Beast
  14. Blood Brothers
  15. Wasted Years
 

Kindle Paperwhite

以前こんな記事を書きました。

roberto.hatenablog.com

 大雑把にいうと、mp3プレイヤーみたいに共通のフォーマットをいろんな提供者、端末で扱うっていうところまで待ちたいという話だったんだけど、まだまだ先の話だろうなということと、とりあえずの興味というか、さわりもせずにあんまり遅れるのも嫌だなというところ、あと、プライム入ったら安かったので、このぐらいならはずしても経験、勉強代でいいかと買ってみました。 

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi 、キャンペーン情報つき

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 とりあえず結論を書いておくと、これなら買って、状況が変わって手放すことになってもまあいいか、という意味でオススメできます。

無料コンテンツ

マンガを読む人であれば、しょっちゅう期間限定で配ってる、大体1~3巻の無料コミックが大きいです。常にある感じなので、ときどきチェックして、軽くでも興味のあるものをとりあえず入れておけば、ちょっとした時間の暇つぶしに事欠きません。気になって続きをお金出して買うこともあるし、損得のバランスはまあいいのではないでしょうかね。

1冊大雑把に500円ぐらいとして、20冊も読めば元が取れる計算。もちろん、タダだから読むんであって、そのまんま計算するわけにもいかないけど、おもしろそうだとお金出して買うものだって普通に当たり外れはあるのだから、あんまり厳密に考えないで。

コミックでなくても、青空文庫系の無料小説でおもしろいのが沢山あります。

あと、ときどきまとめ買いとかで、1冊10円とか50円で買えることもあります。おれは半年ぐらい前に貞本エヴァをまとめ買いで700円ぐらいで買ったと思います。まだ読んでないけど、突如現れた巨大な暇の際に火を噴くことでしょう。

大きさ、軽さが適度

最初開けたときは、あれ?って思ったぐらい小さく感じますが、すぐ慣れるし、慣れたらちょうどいいぐらいです。読むには大きい方がいいし、持ち運びには小さい方がいいわけで、バランス考えるとこの辺がベストでしょう。

ここで行儀の悪い話ではあるけれど、無視もできないのが、片手で読めるというところ。飯屋で定食食べながらでも、テーブルを大きくとるわけでなく、目を離して見えないわけでもない大きさは絶妙。読んだらちょいっとスワイプしてまた食べる、ってのが可能。まあ、これはあんまりやりませんけど、一分一秒早く続きが知りたいときには、まあ。

スマホとの比較

kindleを使いたいだけなら、無料アプリでいけますが、いろいろと人によりけりな問題があります。

まず、バッテリー。がっつり読もうと思うと、日常使う他の機能との併用で、ちょっと許容範囲を超えてバッテリーを食い、いざというときに困るかもしれません。そして、Paperwhiteはいいすぎれば殆どバッテリーを食いません。通勤レベルなら一週間は余裕で充電なしでいける。これは暇つぶしの確保という点からはとても大きい。ツイッターなんかで食ってた暇つぶし用の電力がこれで節約できるので、その点からもオススメかもしれません。

次に容量。これこそ人によりけりだけど、読むかわからないものでもとりあえず入れておけることがメリットなので、音楽や写真との取り合いになり、おれの場合はちょっと無理です。あと、プライムに入っていることが前提で書いているので、amazon videoの問題があります。これをスマホで楽しもうと思うなら、併存はちょっと難しいかと。

まあ、kindle端末ならいくらでもいけるかというとそうでもなく、マンガ、小説などごっちゃで、70冊ぐらいが目安かと。読んだ端から端末から消していくので、そんなに困ることはないと思います。

最後に読みやすさ。画面の大きさももちろんあるけど、基本テカテカ光って、輝度の高いスマホに比べて5倍は読みやすく感じます。そうだろうなとは思っていたけど、その予想以上に目の疲れがない。ベッドで寝る前、明かりを消してからなんて用途の場合、明らかにいいです。これは見比べたけど、普通のkindleより断然Paperwhiteです。

安いコンテンツが増えてきているように感じる

たとえば、伊坂幸太郎のサブマリンが出ていることに書店で気づいて買おうと思ったのだけど、一応調べたらkindle版は2割引でした。昔伊坂はなんでも買ってとっておいたのだけど、今は場所がなく、読んだら売るっていうスタイルになっているので、その買い取り額はその2割ぐらいだろうし、売る手間は省けるし、一応残るわけだから、そのぐらいの作家ならこれはいいかなと思います。

これ、逆に言うと自分にとって重要と思われるものは買わないということにもなります。読む権利を買っているわけで、(わからないけど)なにかあったら吹っ飛ぶし、将来的にこのプラットフォームを諦めるとなったら買い直しになります。もったいない。

その他

操作感はちょっとだけ不満。iPhoneの気持ちよさには到底及ばない。画面遷移もぼやーっと変わる感じで、めくるっていうイメージではない。これ、boyageならいいのかもしれないし、ページめくりがスワイプだけでなく、ボタンでもいけるってのは気になる人にはよさそう。ただ、多分これだけの違いであれだけ値段が離れると正直理解できない。全然これでいい。

キャンペーン情報つき

これを受け入れるだけで2000円も安くなるのにそうしない意味がわからないです。全然邪魔じゃないし、場合によっては教えてくれてありがとうってなもんすら。どうもスリープからの回復にワンアクション多くなることを邪魔に思う人がいるみたいだけど、同意しかねます。そもそもカバーをつけるのが基本だと思うので、それ開ければスワイプするだけで、iPhoneとかと変わらない、ていうか認証がない分良くも悪くも早いぐらい。

3Gはいるかいらないか

おそらくここは皆さん悩まれるところだと思います。が、3Gは要らないと言い切ります。もちろんあったらあった方が便利ではあるけれど、これをつけると今現在で5200円の違いがあります。これはとても大きい。そして、何が決定的って、ちょっとkindleのページ見たらおわかりいただけると思いますが、3Gで落とせない本はちょっと無視できないほど多いのです。駅やコンビニでwi-fiが使えるケースは増えていると思うので、その差額がこれってのはもったいなく感じます。

ということで、もう一回貼りますが、Paperwhiteのキャンペーンつき、3Gなし、がオススメです。多分時代が変わるからそう長くは使わないと思うけど、そのときはそのときを割り切れる値段で、それに見合った程度のメリットはあります。

 

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi 、キャンペーン情報つき

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi 、キャンペーン情報つき

 

 あと、画面剥き出しで、この見え方、さわり心地が肝なのでフィルムを貼るのも抵抗があり、ケースは必須です。なんでもいいけど、本体を安くあげたのだから、ここで奮発するのもアホらしく、悩んだらこれにしておけば、とりあえずおれはまったく不満がないのでいいと思います。

 最後に、これちょっと時間かかってる記事なんですけど、その間に熊本で大きな地震がありました。そこで、とりあえず東京都民に限った話で申し訳ないけど、こういうのを入れておくのはいいと思います。前述の通りバッテリーをあまり食わずに、暗いところでも読めるのはいざというときに役立つのではないでしょうか。 

東京防災

東京防災

 

 そんなとこで。

 

ちはやふる 上の句

まず、広瀬すずという女優について、パーソナリティ的にはよく思っていない。やっぱりあの手の裏方軽視の発言をテレビでしちゃうというのは、愛されるキャラとはいえないし、それを隠さ(せ)ないあたり頭というか要領もあまりよくない。そして、顔はとても可愛いと思うけど、好みというわけではなく、つまり、目玉であろう主演女優は観ることにした理由には一切関係ない。

ただ、マンガはいいお話だと思うし、宣伝から見える再現度みたいなものにも期待がもてる。そして、なにより評判がとてもいい。ということで観てきました。

結論からいうとかなり最高に近いです。まず原作から離れて、つまり知らなくても楽しめるものになっているかというと、知っているおれには完全な判断は難しいのだけど、できていると思う。2時間で起承転結にまとめられているし、画もきれい。キャラクターもよく動いていて、ジュブナイルとして一級。

次に原作再現度という意味で、いくつかのエピソードの勘所をつかんで、それを上手いこと一つのシークエンスにまとめ上げているから、あの話は省いちゃダメでしょ、みたいなのがあまりない。というかおれにはないのだけど、読み直したらそれなりに省いてはいるはず。でも、気にならないならいい。

こういう企画で、ともすると陥りがちなのは、よくできてるんだけどフックがない、という罠。そこは二つのポイントで回避できていると思う。

まず、第一に肉まん君。ここだけ原作と変えている。実は机君も違うのだけど、物語上の機能は大きく変わらないのに対し、肉まん君は殆ど別キャラ。デブも押さないし、軽いし、なにより強いキャラとして描かれている。そしてこれを演じる矢本雄馬がいい。ときどきその軽さでもって場(というか視聴者)をざわつかせる。存在がいい意味で浮いているのだ。それは、他のよくできた部分によって、長引くことなくさーっと消えるのだけど、確かにいまちょっと心が動いたな、という印象が残る。

もう一つが、これは原作読んでないとまったくダメなのだけど、その肉まん、机以外の異常な再現度。須藤もおおって思ったけど、ヒョロはもうずるいだろあんなん。ヒョロじゃん。そんな三次元いるのかよ。できれば、事前に確認しないで観ることをオススメ。出てきた瞬間で笑えるから。下の句の予告でも、松岡茉優がもう間違いないであろう事を見せているのでここは引き続き楽しみ。

これは、いい原作と、話題のスターを丁寧な脚本演出で損なうことなくまとめあげ、その中でちょっとくすぐりを入れることで、再現芸術だけに終わらないという、現時点でこれ以上は考えられない理想型だと思います。

『描く!』 マンガ展

行ったの随分前で、ものすごく今更なんだけど。

大まかに分けると、ふたつゾーンがあります。一つは戦後パイオニアの、もう一つはそれ以降の方の作品となっており、それ以降の方は、なんと、撮影可。正直、一つ目のゾーンは意義はあるのだけど、前菜という感じで、点数も少ない。手塚、赤塚といったパイオニアたちの初期活動の紹介で、幼少期のノート落書きなど、おもしろくもあるけれど、ここはさっと流します。

さいとう・たかを

ゴルゴ13がもちろんメインにはなるけれど、無用ノ介なども少数ながら。ここで一番印象深いのは、マンガというより、デザイナーとしてのセンス。服の部分を全てベタで塗りつぶし、ポケットなどの要素を一切描かなかったり、それを白背景の左隅にだけ描いて余白を大きくとることでかえって際立たせるなど、扉絵のセンスが抜群。

竹宮恵子

花の24年組代表。もちろん想像されるような綺麗な絵こそ見どころだけど、興味深いのは、少女漫画っていうフォームが出来上がる瞬間を切り取れているように思えるところ。まったく同じ話であるここのつの友情が、完全なる手塚フォロワーであるCOM版と、自己を確立しつつある週刊少女コミック版とで並べてあるので是非注目していただきたい。

陸奥A子

正直なところ、ふーん、陸奥A子ねえぐらいに特に思うところもなかったのだけど、実のところ個人的に一番見てよかったと思うのはこれ。本当に美麗で、24年組に隠れてもうひとつ評価不足と感じるのだけど、少女漫画ってものの、少女ってところにフォーカスして、基礎を成した功績はこちらの方が大きいのではないかと思うぐらい。

わたせせいぞうなんかよりずっと上手く、ああいうものを描いて女王になれたのではないかと思うけど、それほど興味がなかったのか、漫画家ですっていうプライドがあったのか。

ここでの田中圭一による、陸奥氏の均一な線っていう分析はとても興味深く、比較対象として山本直樹を挙げているのはああ!と感心した。

諸星大二郎

えぐいの担当。まったく似たもののない、特異点としての諸星大二郎を紹介する手段として、ヒトニグサをそのまんま全部展示してある。この思い切りの良さもこのマンガ展の評価したいところ。宮﨑駿への影響など、ここでも田中圭一の解説は鋭い。

島本和彦

ここでぐっと現代的に。基本このマンガ展は、田中圭一と、おそらく伊藤剛による解説とともに作品を眺めることで気づきを得られるのが一番特徴的なところだと思うのだけど、ここで島本和彦というのはどういうことか。もちろん優れた作家であるけれど、今やそれ以上に観察眼や分析で名を成している人だ。それを更に田中圭一が分析する。ぶっちゃけてしまうと絵の革命性や技巧的に見るべきところは他に比べると少ないのだけど、ただ燃えペンの原稿を見ているだけでいろいろ考えてしまう。

平野耕太

現代の、現役バリバリ最前線の化物。点数も多い原画の数々はもうため息もの。一瞬で読み飛ばされる1枚にこれほどまでの力を注ぐのかと畏怖すら。前に書いた陸奥A子の美麗さには大きなわかりやすい意味があるというか、ストーリーがスローで、その美しさを堪能することが容易なのだけど、ヒラコーさんの場合はもうガンガングイグイ読み進めるタイプだから、このイカレタ描き込みは一見殆ど無駄なのです。でも、もちろんムダなどではなく、それらは潜在意識に怨念のような形で刷り込まれる。

でも、せっかくの機会だからよく見てください。ちょっと夢に見るほどすごいですよ。

あずまきよひこ

ここでそろそろとばかりにデジタル登場。原画とデジタル出力が並ぶので、移行期なんだなということがわかります。

淡い作風の中に、緻密な計算、それに基づく描き直しがたくさんあって、ヒラコーさんほどではないながらに強いこだわりを感じるけれど、これ、連載から直してるのってそれなりに多くの人が知ってることだし、ネット時代だから展示ならではのレアさっていうと、デジタルが増えるこれは、悪いということではもちろんないけれど、残念。

ここでは参考資料にしたようなぬいぐるみ(本物の声の出るジュラルミン!)なども展示されてますのでそれは楽しいですよ。

PEACH-PIT

最初ラインナップを見たときに一番興味がなかったのがここで、実際、今でもあまり変わらないのだけど、最後にこれを見たことで、展示に一本筋が通ったように思う。揶揄したいわけではないのだけど、他の怨念塗り込めたような人々に比べると、大分ライトだし、オタクがオタクのために描いたようなものだなあと感じる。こういう作家は増えていて、確かにそれを説明するにはPEACH-PITは妥当。

ということで締めますが、折にふれて書いたように、素晴らしいのは原画はもちろんのこととして、キュレーションと解説です。いろんなことが色んな角度から解説されていて、その横にそのものがあるのだから目からうろこが落ちまくる。いろいろ美術館行ってるけど、こんなにおもしろい解説はちょっと記憶にないです。

書くのが遅くなって、もう高崎でやるのは期間がなく、どうかとも思ったのだけど、どうも次に川崎でもあるようなので、是非行かれることをオススメしたくまとまり切っていないけれども上げました。

ただ、川崎はおそらく東京圏の人も沢山来られるので、高崎ほど楽しめるかというと少々疑問も。東京圏でも東や北の方など、行ける方は高崎オススメしますよ。とてもいい建物だったし。高崎は今週末まで!

『描く!』 マンガ展 | 高崎市

www.kawasaki-museum.jp

あ、そうそう。カタログにはその解説が全部載っているので、絶対に買っておいた方がいいです。ものすごく良い資料です。まともに出版すべきだと思うんだけど、どうなのかしらね。

友だちのためだけのフリースタイルダンジョン入口

 フリースタイルダンジョンにちょっと興味をもってくれた友だちのために、さくっと観られるよう動画を3本選び、ちょっと解説もつけました。識者からしたらここはもっと深いみたいなことはあるかもしれないけど、そういう目的なのでご容赦を。

挑戦者:CHICO CARLITO

www.youtube.com

まず対漢。一本目のビートはSOUL SCREAMの”緑の森 feat,YOYO-C”でそんなに人気曲でもないから特に使いやすい文脈もない、と思う。

「58」って言ってるのはSHUREのど定番マイクのこと。どうでもいいけどラッパーじゃないおれも宅録用に一本持ってる。そのぐらい定番。だから、三本目でチコが「飛ばしに来てる58 主はこの瞬間 ちゃんと目繋がってる」って言ったところの「主は」は「SHURE」じゃないの?と疑っているけど、どこかで字幕おこしは本人確認するって読んだ気もするので、じゃあダブルミーニングってことで。

二本目。晋平太も言っているようにトラックがNasってUSラッパーの”Nas Is Like”。だから審査でそこに触れるなら「ライク」、まで踏めるのにもったいないかもなーとってところかなーちょっと思った。

R戦についてはクリティカルっていうほどの差はないので、他の多くのバトルみたいに客の歓声なら普通に6:4ぐらいの割れになったのではないかと思うけど、どっちも甲乙つけがたいところにチコが詰まって、そうでなくても漢戦でもそれ詰まってね?ってのがあったので、そこをRにずばっと突っ込まれたので、決めなきゃいけないならおれもそこをとってRにしてると思う。

まったく試合には関係ないけど、この流れでこのライブはないわー。ラップ聴くおれでもちょっと引いている、ってことはお伝えしたく。

挑戦者:焚巻 

www.youtube.com

多分これが一番観られてるやつだけど、時間があればこの一個前から観ることをオススメ。

一本目。このビートの”証言”って言う曲はそこにいるZEEBRAも含めて当時のオールスターでやったような曲で、所謂クラシック中のクラシック。その歌い出しが「証言1」なので、それをそのまんまいうのは特別おもしろくもないけど当然に盛り上がるので先攻ならやらない手はない。ただ、後でも述べるけど、今の日本語ラップの歴史の重要な位置を占める曲なので、そういう文脈からすると当時5歳の焚巻と、既にラップをしていた般若では意味合いが変わるというか、普通にやったら般若有利。般若はこの曲もあって当時イケイケだったZEEBRAYOU THE ROCK★にケンカ売り気味に絡んで名を挙げたって背景もあるし、なんの文脈もない焚巻には少々酷かなと。

二本目。”I REP”は書いてある通りKREVAが入ってる曲で、般若といえばKREVAdisっていうぐらいアホほどdisってきてるのでここはどんな感じなのかしらね。DABO、ANARCHYとは仲いいと思うし。とはいえ、これも”証言”ほどではないけど、近い世代のスターが一緒にやったっていう歴史的な曲ではある。ここで般若が「感謝」ってワード出してくるのはちと微妙っちゃあ微妙。一回ならあえて、なのかとも思うけど、二回目もあるから、多分天然なのでしょう。天然で許されるのが般若はずるい。

三本目。”Street Dreams”。ジブさんのなかでも屈指の人気曲。日本語ラップってものが嘲笑の対象だったような時代から仲間たちとがんばってここまできたぜっていう、歴史総括みたいな歌詞。サビが「俺がNo.1ヒップホップドリーム 不可能を可能にした日本人」なので、般若がこれを締めに使ってる。

さすがにどうでもいいけど、このトラックは、漢が決勝で般若を倒して優勝したB-BOY PARK2002のとき後ろで音出してたSOUL SCREAMのDJセロリがつくったもの。

ってことで、3本とも晋平太、ERONE、390のラッパー3人にしてみると、節目節目でぐっときちゃうような選曲で、嫌が応にも「そのとき般若は」みたいなこと連想しやすく、もうちっと文脈の少ないビートも選ばないと不公平かなーとは思った。そういう意図でなく、初めてのラスボスなんだからキラーチューンで盛り上げようってことだと思うけど。

 挑戦者:DOTAMA

www.youtube.com

 

一本だけ観るならこれがオススメ。

サ上とのDOTAMAの一本目、6:17あたりの「この血が騒ぎ 待つ 世紀末の以降」ってのは、この曲のトラックであるRHYMESTERの”耳ヲ貸スベキ”の宇多丸の歌い出し「血が騒ぎだすこの世紀末 暇なやつらは神の裁き待つ」をサンプリングしていて、トラックはそのときまでわからないということと、それをそのまんま言うのはまだできるとして、パンチライン(オチ)として使えるよう改変しているのが即興と考えると素晴らしいスキル。

あと、同じく一本目の最後の「ダメなラッパーは肉だ」ってのもブッダブランドのNIPPSのちょう有名なパンチライン。体型disから自然に肉の話に流れてそれで締めるのもかなりすごい。

ACEもかなりキレてたので、これにしたけど、やっぱりR-指定との因縁対決は外せないので、時間のあるときに#18もどうぞ。

こんなとこで。