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『描く!』 マンガ展

行ったの随分前で、ものすごく今更なんだけど。

大まかに分けると、ふたつゾーンがあります。一つは戦後パイオニアの、もう一つはそれ以降の方の作品となっており、それ以降の方は、なんと、撮影可。正直、一つ目のゾーンは意義はあるのだけど、前菜という感じで、点数も少ない。手塚、赤塚といったパイオニアたちの初期活動の紹介で、幼少期のノート落書きなど、おもしろくもあるけれど、ここはさっと流します。

さいとう・たかを

ゴルゴ13がもちろんメインにはなるけれど、無用ノ介なども少数ながら。ここで一番印象深いのは、マンガというより、デザイナーとしてのセンス。服の部分を全てベタで塗りつぶし、ポケットなどの要素を一切描かなかったり、それを白背景の左隅にだけ描いて余白を大きくとることでかえって際立たせるなど、扉絵のセンスが抜群。

竹宮恵子

花の24年組代表。もちろん想像されるような綺麗な絵こそ見どころだけど、興味深いのは、少女漫画っていうフォームが出来上がる瞬間を切り取れているように思えるところ。まったく同じ話であるここのつの友情が、完全なる手塚フォロワーであるCOM版と、自己を確立しつつある週刊少女コミック版とで並べてあるので是非注目していただきたい。

陸奥A子

正直なところ、ふーん、陸奥A子ねえぐらいに特に思うところもなかったのだけど、実のところ個人的に一番見てよかったと思うのはこれ。本当に美麗で、24年組に隠れてもうひとつ評価不足と感じるのだけど、少女漫画ってものの、少女ってところにフォーカスして、基礎を成した功績はこちらの方が大きいのではないかと思うぐらい。

わたせせいぞうなんかよりずっと上手く、ああいうものを描いて女王になれたのではないかと思うけど、それほど興味がなかったのか、漫画家ですっていうプライドがあったのか。

ここでの田中圭一による、陸奥氏の均一な線っていう分析はとても興味深く、比較対象として山本直樹を挙げているのはああ!と感心した。

諸星大二郎

えぐいの担当。まったく似たもののない、特異点としての諸星大二郎を紹介する手段として、ヒトニグサをそのまんま全部展示してある。この思い切りの良さもこのマンガ展の評価したいところ。宮﨑駿への影響など、ここでも田中圭一の解説は鋭い。

島本和彦

ここでぐっと現代的に。基本このマンガ展は、田中圭一と、おそらく伊藤剛による解説とともに作品を眺めることで気づきを得られるのが一番特徴的なところだと思うのだけど、ここで島本和彦というのはどういうことか。もちろん優れた作家であるけれど、今やそれ以上に観察眼や分析で名を成している人だ。それを更に田中圭一が分析する。ぶっちゃけてしまうと絵の革命性や技巧的に見るべきところは他に比べると少ないのだけど、ただ燃えペンの原稿を見ているだけでいろいろ考えてしまう。

平野耕太

現代の、現役バリバリ最前線の化物。点数も多い原画の数々はもうため息もの。一瞬で読み飛ばされる1枚にこれほどまでの力を注ぐのかと畏怖すら。前に書いた陸奥A子の美麗さには大きなわかりやすい意味があるというか、ストーリーがスローで、その美しさを堪能することが容易なのだけど、ヒラコーさんの場合はもうガンガングイグイ読み進めるタイプだから、このイカレタ描き込みは一見殆ど無駄なのです。でも、もちろんムダなどではなく、それらは潜在意識に怨念のような形で刷り込まれる。

でも、せっかくの機会だからよく見てください。ちょっと夢に見るほどすごいですよ。

あずまきよひこ

ここでそろそろとばかりにデジタル登場。原画とデジタル出力が並ぶので、移行期なんだなということがわかります。

淡い作風の中に、緻密な計算、それに基づく描き直しがたくさんあって、ヒラコーさんほどではないながらに強いこだわりを感じるけれど、これ、連載から直してるのってそれなりに多くの人が知ってることだし、ネット時代だから展示ならではのレアさっていうと、デジタルが増えるこれは、悪いということではもちろんないけれど、残念。

ここでは参考資料にしたようなぬいぐるみ(本物の声の出るジュラルミン!)なども展示されてますのでそれは楽しいですよ。

PEACH-PIT

最初ラインナップを見たときに一番興味がなかったのがここで、実際、今でもあまり変わらないのだけど、最後にこれを見たことで、展示に一本筋が通ったように思う。揶揄したいわけではないのだけど、他の怨念塗り込めたような人々に比べると、大分ライトだし、オタクがオタクのために描いたようなものだなあと感じる。こういう作家は増えていて、確かにそれを説明するにはPEACH-PITは妥当。

ということで締めますが、折にふれて書いたように、素晴らしいのは原画はもちろんのこととして、キュレーションと解説です。いろんなことが色んな角度から解説されていて、その横にそのものがあるのだから目からうろこが落ちまくる。いろいろ美術館行ってるけど、こんなにおもしろい解説はちょっと記憶にないです。

書くのが遅くなって、もう高崎でやるのは期間がなく、どうかとも思ったのだけど、どうも次に川崎でもあるようなので、是非行かれることをオススメしたくまとまり切っていないけれども上げました。

ただ、川崎はおそらく東京圏の人も沢山来られるので、高崎ほど楽しめるかというと少々疑問も。東京圏でも東や北の方など、行ける方は高崎オススメしますよ。とてもいい建物だったし。高崎は今週末まで!

『描く!』 マンガ展 | 高崎市

www.kawasaki-museum.jp

あ、そうそう。カタログにはその解説が全部載っているので、絶対に買っておいた方がいいです。ものすごく良い資料です。まともに出版すべきだと思うんだけど、どうなのかしらね。