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経堂龍之介の転職/秋谷弥潮

すっかり書くのを忘れていた。10月15日の話です。

あんまり読み切りをチェックする方ではないのだけど、モーニングペラペラめくってて、妙に気になる画があったので戻って読んでみたらこれがえらいもんだった。秋谷弥潮という方のモーニング新人賞「THE GATE」受賞作。

ある刑事が、殉職した同僚の間際の言葉に従い、小説家を目指す話。この刑事は強面ではあるのだけど怖い人ではなく、どちらかというと優しくて、物静かで実直な人。そして、その娘とさらにその先輩というのが主な登場人物。

主人公である刑事はその実直さと突然恋愛小説家になると言い出す異常さのギャップでもって話を動かす、どちらかというと狂言回し的な立ち位置で、話の真ん中にいるのは実はその娘。この娘がまずペルー人とのハーフで、つまり刑事の妻はペルー人なんだけど既に離婚しているというややこしさ。しかし彼女はハーフであること以外に特筆することはない、極めて常識的で、かわいらしい普通の女子高生。それが話の真ん中で、おかしなことを言い出した父親と、自分の先輩である女子高生小説家を繋ぐ。そして、その女子高生小説家がまたおかしい。その後輩のことは溺愛といっていいほど気に入っているのに、父親は糞味噌扱い。割と酷いことをズケズケ言う人。それが本当は相手したくないんだけど、後輩可愛さのあまりいやいや面倒を見る。

この時点でとても読み切りとは思えないほど盛りだくさんなのに、更に本業である刑事として関わる、同僚が殉職することになった事件が加わり、書いてて本当にこれ読み切りで処理できる情報量なのかと思う程なのだけど、これが見事にできている。細かな疑問点を感じさせることのないスピードで話がガンガン動き、ちゃんとオチもする。

指摘している人が結構いたのだけど、テイストとしてはギャグのときの沙村広明が近い。キャラの立った何人かの主要人物が話を動かし、つっこんで欲しいところは想像以上の表現でつっこんでくれる。

絵も味があってよい。審査員のツジトモが言っていたように、背景に惜しいところはあるものの、人物は魅力的。絵柄としては、先輩高校生小説家に顕著なのだけど、山下和美の影響を感じる。この作品に対する賞賛ツイートをしたところ、担当と思しき人物がrtしてくれたのだけど、その方のプロフィールを見たら山下和美も担当しているっぽく、アシスタント経験があるのかもしれない。

ということで、タイミングが遅れたことによって雑誌で読めなくなったことは申し訳ないのだけど、興味をもってくれた方がおられましたら電子書籍や有料webでなら読めるので是非。

 

モーニング 2015年46号 [2015年10月15日発売] [雑誌]

モーニング 2015年46号 [2015年10月15日発売] [雑誌]

 

 

d.morningmanga.jp

これはと思って珍しく雑誌を保存版として購入したぐらい気に入っている。連載が始まるのもそう遠いことではないだろうし、そのうちどこかには収録されるだろうけど、それまではとっておきたいと思う。