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ザ・ファブル/南勝久

基本ジャンプ、スピリッツ、ヤンマガ、サンデー、マガジン、モーニング、チャンピオンを読んでるんだけど、今一番おもしろいと、続きを楽しみに読んでいるのがこれ。なのに、マンガ紹介するブログでこれ推してるところが見つからなかったので書くことにした。

ナニワトモアレ南勝久の作なので、あれ(ヤンキー世界)が苦手な人は敬遠してしまうかもしれないけど、それはちょっともったいないですよ。

 

 

 

大筋

ほとぼりを冷ますため、1年間縁のない土地で休養することにした殺し屋が、ズレながらも普通の生活を楽しもうとしているところと、にも関わらずその能力を請われてヤクザのもめごとに巻き込まれそうになるという話。

主人公は三枚目なところがありつつも非常に有能で頭もいいという作りで、ここにスリルが生じる余地は殆どなく、所謂無敵キャラ。話を動かすのは日常パートにおける同僚たちと、わかりやすく悪者である、この地でのヤサを世話してくれている組のはみ出し者。

この裏と表の話がそれぞれそれなりのテンションを保ちながら並行して進んでいたところ、そろそろ話が動いてほしいなというタイミングでつながり始める、というのが今。このタイミングが絶妙で、一気に引き込まれている。

安心感とスリル

前述のとおり、主人公は無敵キャラなので、最終的には問題なく勝つのだと思うから、見てられないというような悲惨な話になることはあまり考えられない。ただ、周りはそれなりにスリルのある状態に陥りつつあるので、興味は保たれたまま進む。そして、それらのもめごとに、ほとぼりを冷ましながら、日常を経験することで殺し屋として一皮むけることを目的としてる主人公は、殺しのプロというスタンスでは関わりたがらない。この加減がいい。よくある、主人公が無敵ならさっさと出ていけばいいだろというのとは一線を画す。物語上の機能として、行動のブレーキがよくできている。

悪者がわかりやすくむかつき、そうとは知らず主人公の日常に害を及ぼそうとしているので、これが主人公にやられるのはもう既定路線。ライバルというほど有能な感じでもないし。だから、勧善懲悪的に安心できることはほぼ間違いない。しかし主人公が行動しないと決めている範囲でトラブルは広がっていくので、スリルはあるというよくできた作りとなっている。

今後

おそらく、前述のとおり、今の敵はそれほど大物に描かれていないので、遠からず倒されるでしょう。ただ、それだけだと水戸黄門メソドといえばそうなので、その後、ライバルといえるような存在が出てくるのではないかと期待する。とりあえずそこまでは単行本を待って、次に移ったあたりから週刊で読み始めたら幸せになれるのではないかしら。

1年っていう期限を絶対ルールとみるか暫定ルールとみるかでちょっと話が変わってくるのだけどね。1年っていうルールを設けたのは主人公のボスであって、これは彼にとっては絶対に思えるのだけど、そこから抜けるというように話が進んだら絶対じゃなくなるからねえ。

作者

 ナニワトモアレしか描いていないからそれだけの印象。単純な話を描ける人だけど、それをよしとしないところがあると思う。ナニトモはヤンキー物としてのフォーマットとしての、ケンカや走りに勝ったりだなんだやギャグというポイントは押さえつつも、実は結構暗い話。どんなにその世界で有能ぶっても社会という枠組みの中では弱者の部類に入るという現実を割と容赦なく出してくる。ナニトモの最後、エピローグで主要キャラのその後をあっさりやるけど、あれは本当にすごい。ちょっと悲惨。ヤンキーになどなってはいけないのだというメッセージすら感じる。元々環状をやっていたという作者の本気かもしれない。似たような形で、輝かしい未来を匂わせていたクローズとのなんと対称的なことか。そして信用できる。甘い嘘はつかない。きっとザ・ファブルもしっかりと心に残る一作になるのではないかしら。

や、クローズもファンタジーとして好きですよ。念のため。